平成25年度 特別支援教育啓発研修会

演題「みんな、やさしさの根っこで つながっている」

平成25年11月14日 福岡市民会館
講師 詩画作家 大野 勝彦氏

平成25年度 特別支援教育啓発研修会

特別支援教育と障がい児への理解と認識を深めるため、特別支援教育啓発研修会が行われました。今年度は左右の腕を失くされる大事故にあわれたにもかかわらず、前向きに全力で生きておられる大野勝彦さんをお招きし、ご講演いただきました。

高校卒業後、実家のハウス園芸を営まれていた大野さんは、45歳の時、農作業中に不慮の事故により両手を切断。事故直後は「仕事ができなければ男じゃない」「一番価値の無い人間に成り下がった」とさえ思われたそうです。
そんな失意のベッドの上で、両手を失ってはじめて知る子ども達、母、妻の思い、また人の心の温かさに気づかされ、入院3日目から“湧き出る生への思い”を詩に託していかれた様子や生きていることの喜びについて語られました。

妻・子どもへの思い

 事故にあうまでは仕事人間で、仕事さえしていれば子ども達に関わる必要がないと思っていた大野さんは、両手を失くして初めて「本気で子どもの手を握ったことがあっただろうか」「子どもとの時間を作っておけばよかった」と後悔し、そして「家族は見舞いにも来てくれないだろう」と思っていたそうです。しかし、入院中子ども達から『父は強い人、なくてはならない人、尊敬できると、人前でいえる人』と書いた手紙をもらい、生まれてはじめて涙を流したそうです。
また自分の前では明るく振る舞っていたが廊下では泣いていると知った子ども達の健気さや、夜も寝ずに看病し頼まなくても何でもやってくれた妻の優しさに、ただ感謝の気持ちしかないと語られました。

母への思い

事故のとき、かけつけて来たのはお母さんでした。しかし、気が動転して機械を止めることができなかったお母さんを事故は自分のせいだとわかっていながら「あの時助けてくれなかった」と責めてしまったそうです。
入院中、毎日病院に来ては泣いていたお母さんに謝りたいけどなかなか言えない。また母を責めたことを後悔しても一度言った言葉はどうにもならない。その時の思いを詩に託し「これからは母を泣かせない、親を一番大切にする」と誓ったそうです。

人への思い

これまで人に頭を下げることも、笑うこともなかった大野さんでしたが、人のぬくもり、優しさに触れるうちに何かお返しをしたいと思うようになったそうです。しかし何もできない、「ならば最初は笑うことから!」と、トイレで笑う練習から始めたそうです。
そして「頼まれたことは全部引き受けよう、全力で!」「どんな小さなこともチャンスだ」と声がかかると「はい、分かりました」と全国どこへでも、英会話を勉強してアメリカまでも講演に行かれるそうです。

新たなる思い

25年間泣き続けるお母さんを元気づけるため美術館を建てようと思い10年間絵を描き続け『風の丘 阿蘇大野勝彦美術館』を開館されました。今の夢は日本一の美術館にすることと熱く語られました。

「手をなくしたのは、家族や人のぬくもり、優しさなど多くのことに気づかせてくれるため。そして事故が生き方を変えてくれた」と逆境に感謝して生きる大野さんの姿が、多くの人の心にエネルギーを与えてくれたと思います。

最後に『笑顔いちばん やさしさいちばん みんなねっこで つながっているよ』と力強い筆運びで『書』をご披露され、講演会は大きな拍手で締めくくられました。