日時 : 平成20年11月13日 10:00~
場所 : 少年科学文化会館大ホール
講師 : 小野田 正利 氏 大阪大学大学院人間科学研究科教授
演題 : 子どものために手をつなぐ ~イチャモンはつながるチャンス~
今年度の青少年健全育成大会は講師に小野田正利先生をお迎えして、学校が抱える大きな問題のひとつである保護者や地域住民からの無理難題(イチャモン)についてパワフルにお話いただきました。
《悲鳴をあげる学校》
学校への要求が保護者や地域住民から増え、時にはその内容が無理難題な場合があります。それを私は「イチャモン」と呼んでいます。モンスターペアレントという名称もありますが、親は化け物ではありません。親が過激な言葉を使うこと自体は問題にしても多くは子どもの幸せを願う一人の人間には違いありません。その人の人格をも否定しては向き合うことはできなくなります。
《敵ではないのに》
人と人とが関わって生活していく時には確かに摩擦が生じることはたくさんあります。学校は子どもの成長・発達を保障する大切な所です。だから、保護者や地域住民からさまざまな要求が出されるのは当然のことです。しかし、それが無理難題要求(イチャモン)となった時、振り上げた拳が下ろせなくなったり、トゲトゲしい物言いになったりすることもあります。また、保護者からの要求が正当な場合でも学校や教職員側が近年膨大になった仕事や多忙のために話し合う時間が十分に取れずトラブルに発展することもあります。お互いの思いの食い違いが無意識の壁となっているかもしれませんが、「子どもを伸ばすことを考える」ということを共感するためにもまずは、話し合ってみましょう。
《子どもが真ん中に“結び合い”へ》
「先生を問い詰める」「保護者を追い詰める」ではなく、子ども達のために手をつなぎあえる関係と信頼をどのようにつくっていくかが大切です。保護者は、学校や先生にいたらない点があれば、できるだけ顔を見ながら直接話し合ってください。そして、先生の良いところをほめてください。けなしてばかりいると、意気消沈し、やる気を失ってしまいます。一方先生は、保護者から厳しい言葉を投げかけられてもその要求のウラにあるホンネをくみ取ってほしいのです。保護者と一緒に子どもの成長を見守ってほしいのです。子どもを真ん中に、子どもが成長していくことを喜びあうことで、保護者と先生が手を結び合うことができるのです。情報を共有し、学校の応援団となって学校の体力・対応力アップを図りましょう。そうなれば、子どもの姿を多角的に見ることができ、トラブルに発展していくことも少なくなっていくのです。
《まず話しませんか、語りませんか》
イチャモンの背景には世間から孤立する子育てがあるかもしれません。トラブルを子どもへの批判、親である自分への非難と思い、反応してしまうのです。大事なことは「子どもが私たち大人に何を伝えたかったのか。訴えたかったのか」に耳を傾けることでしょう。お互いに歩み寄り、一緒に考えるという態度で接すれば、話し合いになっていくはずです。表情を見ながら話すことを大切にすれば、語り合うことが可能になっていくのです。それによって人と人とが結び合い、信頼性と共同性を培える学校になっていくのではないでしょうか。
《皆で学校を考える》
「学校で人と人とがつながる」「子ども達の笑顔があふれる学校」「いやなことも辛いこともあったけど、やっぱり楽しい学校」そんないくつもの思いをこめ、PTAの皆さんには仲立ちと取り持ちをお願いしたいのです。お人よしと言われようが、保護者と学校のパイプ役として、これからどうしたらいいのかを前向きに考え行動していってほしいと思います。
小野田先生の言われるように、「私はこう思うのですが・・・」と色々な機会や場所でお互いの意見を交わしあい、「子どもを中心に置く」とはどういうことなのか、そして私たちは子ども達のためにどういう未来をつくっていくのか共に考えていきましょう。